通勤中にガベコレをリピート再生して数年が経った。
トリ
適宜、レギュラー放送以後の特別回などもはさみつつ延々と聴いている。
筆者
人生で何十周聴いたかは定かではないが、今も謎の魅力から抜け出せずにいる。
そんなわけでガベコレの各回を振り返る記事を残すことにした。
珍な発言、蹴躓くようなレトリック、曲芸のようなお二人のキャッチボールの数々に改めて向き合うのである。
今回は2010年4月に放送された回である。
【ガベコレ】黒沢映画を語る回を振り返る
オープニング
平『この、深夜の冷えたラーメンを無理にすすらせるような』
京『あの、油が固まったような』
平『そういう番組を目指してます、はっきり言って』
どんな番組なんだ、という始まりである。
しかしながらこの素っ頓狂っぷりも含めて、そんな番組なのだというのは少し聴いていればよく分かる(はず)。
そんなわけで平山先生が「耳寄りな情報がある」とのことで、黒澤明生誕100周年記念の話題で始まる回である。
平『黒沢作品ってのはね、観たほうがいいですはっきり言って』
京『おもしろいですよね』
平『何が面白いってね、みなおかしいです、これ作ってる人』
生きてる人間に向かって弓矢を射掛けているのだそうな。
三船敏郎、集団に矢を射掛けられる
平『おい御船ぇ、お前自由に動いていいいからよぉ』
京『そんな言い方したの?』
平『僕このネクタイはねねじりんぼうじゃないんだよフランスパンじゃないから』
京『それは違う人じゃないですか』
三船氏は動いた先に本当の生矢をずばばばと射たれたらしく、想像を超える矢に度肝を抜かれたという。
平山先生が語る、黒澤映画撮影エピソードはなかなか凄まじい。
射掛けられた矢のすべてが顔面狙いだったとのこと。
平『一番近くの矢は拳2個分くらいのがきたそうですよ』
京『つまり稲川淳二を先駆けること、20年くらい前に三船敏郎は初代リアクション芸人だったんですね』
平山先生のイチオシ「蜘蛛巣城」京極先生は「隠し砦の三悪人」
蜘蛛巣城はものすごく遠くから射掛けて、それをロングで映している。
射たれまくるラストショットは絶叫モノだそうな。
平『柿を射った音を使ってます』
京『マクベスですよね』
平『京さんなにが好きなんですか』
京『隠し砦好きですよ』
平『人津波よかったですよね』
京極先生を「京さん」と呼ぶ平山先生はなかなかレアである。
昨今の俳優事情と七人の侍も冷房には勝てなかった話
京『あの、主役が汚いでしょう、あれがいいんだよ』
平『汚くて、意地汚くて、がめついってのがいいね。リメイクしたときの最大の弱点はかっこよくしちゃうとこだね』
美男が多く(美女は良し)、ジジイ役者がいなくなってきているのがお二人の考える問題点の一つとのこと。
平山先生が昔見に行った七人の侍のリバイバル上映にて、隣の老人が冷房が寒い寒いと言っていて、よく見ると勘兵衛役の志村喬氏だったそうな。
平『七人の侍も冷房には勝てなかったんですね』
殺陣の話
カメラマン志望だった三船敏郎は画作りにこだわりがあるとのこと。
動きが早く、殺陣が早いそうである。
話は昨今の殺陣がCGでちょっとずるい、というところからカツシンの殺陣は凄まじいという話題へ。
平『カツシンってターミネーターに勝てると思うんだよね』
京『勝てますよ』
京『カツシン、御船、錦之助は早い』
平『カツシンは逆手がすごい』
京『カツシンや御船に関係ないんですけど、びっくりした盾があるんですよ、時代劇じゃないんですけど快傑ライオン丸ってのがあるんですよ』
平『また飛びましたね』
京『逆手なんですよ。なんでかなって思ってたんですけど』
なにやら件の作品は特撮でもあるので、ぴょーんと飛んだりすることもあり逆再生しているらしい。
そのため殺陣を逆再生しているっぽいとのことである。
京『それに気づいて殺陣としてのランクがぐっと上がりました』
平山先生、真剣で切られかける
本身をもっている角川春樹氏から「こうなんだよ平山」と刀の振り方を説明されていた平山先生が、うっかり切られかけた話。
平『一緒にいた編集が日向のサザエみたいに動かなくなっちゃった。『魂が日焼けしちゃって…』って』
余談だが、後に大沢在昌先生が番組に来襲した際には、平山先生の「魂が日焼け」するので要チェックである。
おわりに
ということで黒澤映画について語られた回を振り返ったり、言葉を拾ってみたりした。
筆者が一番最初に聴いたガベコレがこの回だったと思う(平山先生の言うところの「レジスタンス活動」に不意に触れたのだ)。
今にして思えば終止ひとつのテーマについて話し尽くすのは珍しい気もしなくもない。
好きなものについてあれこれ話すお二人の様子は、そのものをよく知らなくてもなにやら魅力的なのだ。
筆者もこれにつられて当時近所のTSUTAYAから黒澤映画を借りてみていたものである(面白かった)。
いやはや、東京ガベージコレクション、面白いものである。