チャン・ジェヒョン監督の『破墓 パミョ』という韓国のオカルトでホラーな映画を観てきた筆者である。
なんか出てきちゃう映画ね。
まじでなんかすごいのでてきたわ〜…!かなり楽しく見れる映画だったぞ
そんなわけで感想なんかを書き記しておきたい。
※以下、映画の内容に触れているのでご注意ください。
『破墓 パミョ』のおおまかなあらすじ
韓国の巫堂(ムーダン)であるファリム(キム・ゴウン)とその弟子ボンギル(イ・ドヒョン)は米国ロサンゼルスにて、法外な報酬でもってある依頼を受ける。代々跡継ぎが謎の病気にかかるという富豪一族からその原因の調査を依頼されたわけだが、ファリムはその原因が先祖の墓にあると見抜いていた。
あいつらに協力してもらって改葬するしかしかないよな〜と微妙に舌打ちしつつ韓国に戻りったファリムとボンギルは、40年韓国の土地を観続けてきた風水師サンドク(チェ・ミンシク)とベテラン葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)という味のあるおじさんコンビをこの仕事に引き入れる。
依頼人(キム・ジェチョル)の先祖の墓を観に行くも、あまりの不吉さにサンドクが一旦依頼を断り中断。しかし依頼人の子どもの命も危ぶまれる状況を捨て置けず、ファリムは改葬とお祓いを同時に執り行うことを提案し、サンドクを説得する。
改めて墓地に集まり「テサルお祓い」の儀式を執り行い、ボンギル他数名の打ち鳴らす打楽器の音に併せてファリムが妖艶に舞いいつつ、その傍らで破墓が決行されるのであった。
滞りなく改葬が終わったと思われたのだが、突如として雲行きが悪化し、そこから出てきた何かによって事態はとんでもないスケールに及び4人を襲う…
てな感じ!で、こっから更に2転3転して、最期にはなんだかもうすごいものが出てきちゃうぞ!
『破墓 パミョ』のほんわか感想
ムード満点な、エンタメ要素たっぷり大満足オカルトホラーであった。
思いもよらぬものが出てきちゃってなんだか楽しかったゾ…!
絶妙なロケーションのなんだか厭ァ〜な墓地を掘りまくってたら立て続けに色々出てきてすごいことになる、そんな穴掘り映画でもある。
不吉さの演出がたまらん
オカルト・ホラー的なジャンルになると思われる本作だが、不吉さの演出が素晴らしい。
最初に「あの墓」を訪れた時にかなりどんよりしまくるわけだが、主に音によるそのどんより演出が最高であった。
更にその後に現れてしまう「もう一つの棺」のモノリスじみた超然とした存在感も圧巻。
あちゃ〜って感じがいいんだよな(デカすぎ)
闇夜の山などのかなり低照度な場所も多く、なんならもうよく見えないシーンも多かったりしてまた不吉なのである。
また監督のこだわりにより、なるべくCGを使わない形で撮影されているというのもポイント。
火の玉が宙を漂う、あるシーンにて暗闇の山中にて火が実際そこにあるかのような印影の移ろいの描写に「リアルだな〜」などと感じて観ていた筆者だったが、実はそのシーンは特撮で実際に火を使って撮影されていた模様。
また終盤に出てくる「ヤバいもの」のビジュアルもかなり強烈である。それもまた特殊メイクで作り込んでいるという。
多角的に作り込まれた不吉映像だったわけである。
お祓いシーンのムードむんむん
予告にも使われている「テサルお祓い」のシーンは土着性やら妖しさやらが立ち込めまくりでかなりいい感じであった。
ちなみにお祓い的な儀式=「グッ」って呼ばれているそうな。「悪鬼や厄=サル」を「代わりに祓う=テ」らしいぞ。代わりに鶏とか豚を殺傷して神に捧げる、って儀式なんだと
だから豚をお供え物にしてたんだな
打ち鳴らされる打楽器の騒々しさは確かに邪気的ななにかを祓おうとするには良さそうだし、ファリムの舞はカッコよくて見応えあり。
ムーダン役を演じるうえで、ファリムを演じたキム・ゴウンは本職のムーダンの方のもとで所作や楽器の演奏のレクチャーを受け、またテクニカルなこと以上に会話を重ねて人生を理解しようと努めたという。
またこれらのお祓いシーンについては、実際のお祓いを観ることは叶わなかったため資料映像を参考にしてのぞみ、撮影はカットを割らずに4つのカメラで同時に撮影したそうな。
日本語が不意に出てくる
主にファリムとボンギルによって、日本語が話されれるシーンがちらほらある。
ファリムは普通に話せるっぽいし、ボンギルもなにかを憑依させられるからそれで日本語話しちゃったりもしてたな(やや拙いのがかわいい)
ちなみに出てきちゃう「ヤバいもの」の声には、かの小山力也氏が起用されている。
チャン・ジェヒョン監督、日本の漫画好きでアニメの『バキ』シリーズきっかけで小山さんにしたみたい
で、なぜ日本語が?というところだが、じつは色々出てきた挙げ句に日韓の歴史もまたじゅるっと出てきてしまうのである。
面食らった
ある種、日本ではあまり描かれづらい史実にも繋がりうる話で、急に奥行きがまた一段階深まるのである。
映画「福田村事件」などで描かれたような時代の話がからんできちゃうわけだ
みんな仲良くてほっこり
脚本やその設定も面白かったのだが4人の俳優がそれらの良さを更に引き出しているようでイイ感じであった。美女に美男に味のあるおじさん達の、ビジネスな関係だとはいいつつも微妙に仲がいいチーム感にほっこり。
最初は互いに舌打ちしたり「がめつい」って陰口行ってたんだけどね〜
特に後日談の、仲良すぎない?という追いほっこりシーンの諸々に結果的に笑顔で劇場を後にした筆者であった。
知り合いの病室でデリバリーピザとか店屋物食えるのおもろいな
おわりに
ということで、『破墓 パミョ』を観た!という話である。
ムードがあって演技もイイ感じのすばらしいエンターテインメント作品であった。
なんだか面白かったな〜
気になったら是非観てみよう!
おまけ パンフレット
主要キャストや監督へのインタビュー、映画に出てきたキーワード解説となかなかの分量で読み応えあり。日本人として声の出演をしている小山氏へのインタビューも。
とくに映画研究者の崔盛旭氏のコラムは読み応えあり。終盤モチーフとして出てくる鉄杭に込められた日韓の歴史に関する話と、韓国にてその要素を持った映画が1200万人もの人々に観られているということもまた何やら考えさせられるところである。