「無駄なことを続けるために」。
なんと素敵な響きであろうか。
トリ
これは今回紹介する本のタイトルである。
「無駄づくり」なる200以上の無駄なものを作り上げ、いまやそれで生活している発明家の藤原麻里菜氏の著書を読んだのだ。
本書は、サブタイトル的に「ほどほどに暮らせる稼ぎ方」と題されている。
この本ではその無駄づくりを続けるために稼ぐべく、氏が考えぬき、そして試行錯誤した経験をもとに稼ぐためのエッセンスが記されている。
この本には現代人が生きるためのヒントがきっとある。
【本の紹介】「無駄なことを続けるために」藤原真里菜
藤原麻里菜氏とは? まずその無駄な発明の一端を垣間見る
藤原麻里菜氏とは、YouTuberでありコンテンツクリエイター、文筆家、映像作家でもある。
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
かつては芸人として活動していたそうだが、その中で始めたYouTuberとして無駄づくりをするの中で自分によりあっている方法を見出し今に至るという。
発明の数々は「無駄づくり」という氏が運営するYouTubeチャンネルを中心に、そのなんとも無駄な様子をまじまじと見ることができる。
ということでいくつかの動画を貼らせていただく。
らくらくハイタッチくん
YouTubeスペースで撮っているらしく特に凝った動画になっている。
インスタ映え台無しマシーン
これまたやや大掛かりな動画に仕上がっている。
呪いの藁人形デバイス
バーベキューという概念を呪う藤原氏。
実は企業タイアップ動画である。
企業とのタイアップで動画を作成する、というのも稼ぐための一つのアプローチと言える。
無駄なことを続けるための道筋
藤原氏は1つ無駄なものを作ったら、それを映像や文章に落とし込み、インターネットを介して大勢の人々に見てもらっている。
今やそれで生活をしているのである。
本書にはそこに至るまでの道筋が示されており、以下のような構成になっている。
- まずは「作る」ことから始める
- ぼんやりとした思考を「分かる」
- 分かりあうには「見せる」
- 無駄なことを続けるために「稼ぐ」
どのようにすれば自分がやりたいことを続けていけるのか、氏が考えて実施した、泥臭くも地道なアプローチがなんとも素直な文章で書き記されている。
なんらかのクリエイターを志すものには非常に参考になることなのでは、とただの凡人の筆者などは感じるのであった。
生きづらさを生きやすさに昇華するスタイルの確立
藤原氏の無駄づくりの源は小学生の時分に味わった「友達だと思っていた子の誕生会に呼ばれなかった」という経験にあるそうな。
それ以降、悲しみや怒りが混じったような微妙な感情に敏感になったという。
氏が無駄を作り続けるのは、そんな微妙な感情を昇華させんがためだ。
そしてそれは芸人時代から取り組んでいたことでもある。
氏は以下のように語る。
自分の性格の悪さとか、社会と折り合いがつかないところを面白がりたいからやっている。それは、誰かを傷つけてすっきりしたいわけではなくて、大勢の人たちと、「私ってこんな感じなんですよ」という姿を共有したいだけだ。そして、それが私の世界を生きやすくしてくれる。
悲しみや怒り、あるいは嫉妬やなんらかのひねくれた想い。
無駄づくりにより、それらを自身の糧に変える手段を得たのである。
無駄づくりで稼ぐために考えて動き回る
この本を読んでまず思ったことが、藤原氏の文章が大層うまいということである。
実は筆者はこの本を手に取るに際し「ふわっとした内容だったらどうしよう」などと思っていたのだ。
しかし読んで面食らい、むしろその文章のうまさに慄いたのであった。
それは置いておくとして、藤原氏が文章を磨くに至った以下のような経緯についても本書で紹介されている。
文章でも無駄づくりについて知ってもらうべく、藤原氏は自身のブログに無駄づくりのことを記し始めた。
そしてそれをある著名なウェブライターに評してもらう機会を得たという。
そこで「発想が面白いのに、その面白さを文章に落とし込めていない」という的確な指摘をされる。
それ以降、まずは書籍にて文章について学びながらコンスタントに記事を書きつづけたそうだ。
そうしているうちにウェブメディアからの寄稿依頼を得るに至る。
ちなみに以下の本をはじめに読んだそうだ。
また一時期フリーライターとして編集プロダクションで働いていたこともあり、それは文章スキルを磨くうえでも非常に役立ったという。
そうした経験の中で洗練された文章なのである。
いまではウェブメディアでの連載を複数持つほどになっている。
この「文章」については氏の稼ぐ方法・スキルの一例である。
他にも映像やクラウドファンディングなどの各種アプローチに対してどのようにすれば自分のところにお金を得られるのかを検討している。
その多くの試行錯誤はぜひ本書の中でご確認いただきたい。
印象深いフレーズメモ
以下、筆者が気に留めた藤原氏のフレーズである(ちょっと要約している。筆者の備忘メモの向きが強いが参照されたし)。
- 手を動かすことも、思考を加速させる一つの手段
- 制限があると自由に物事を考えられないようだが、より頭の奥にあるものを引っ張り出しやすくなることに気づいた
- 伝えたいことを削ることも大切
- 下手でも継続してコンテンツを更新することで別の視点がひらかれる
- とにかく量をこなすことで質はあがる
- モヤモヤを言語化することで、自身の欲求が明らかとなり、それに伴って理想と現実のギャップを埋められるようになる
おわりに
筆者はこの本で初めて藤原氏のことを知るに至ったわけである。
そして本書を読んですっかり藤原氏が気になってしかたなくなってしまった。
とりあえず氏の無駄な発明品の数々を網羅すべく動画を見ている次第である。
いかんせん200個を超える数があるため、この記事を書いている2018年の年末年始はまったく予断を許さない。
ちなみに氏の動画に使われている音楽が非常に良い。基本的にインストなのだが、動画によくマッチしており、さらに謎の中毒性を感じる。
空中カメラというバンドが演奏しているのだそうだ。
いやはや、「無駄なことをつづけるために」、面白いものである。
筆者が気に入っている動画↓