この文章は、筆者がごく私的に友人に送り付けていた手記を今一度世に(なぜか)送り出す、という趣旨の記事である。今回は2012年のライブについてである。
当時の人間椅子(もとい椅子ニンゲン)のことを知る一助になればとは思うものの、ごく私的な手記を元にしているため余計な情報が大半を占めていることを留意されたし。
今回は2012年の和嶋工務店との対バンについてである。
トリ
非常にレアな内容のライブであった。
【今更ライブレポート】椅子ニンゲンライブ@高円寺SHOW BOAT 2012/10/5
9月某日 筆者、謎のバンドが出演するライブのチケットを入手す
さて、2012年9月某日、筆者はたまたま「和嶋工務店」のライブ情報を入手した。
和嶋工務店は人間椅子のギタリスト・和嶋氏が社長を務めるブルースバンドである。
そう、工務店の社長である。
つまりライブ=施工、ということになる。
そして他にも2つのバンドが出演するらしい。
1組は「Psychedelic Lollipop」なるグラムロックバンドであり、もう1組は「椅子ニンゲン」なる謎のバンドである。
その謎のバンド「椅子ニンゲン」のメンバーはけんちゃん、なかじ、わじわじ、なる3名である。
怪しすぎる。
これはいくしかあるまい。
筆者はチケットを買い求めた。
開催日は2012年10月5日(金)、平日の19時開演である。
定時で上がって走って電車に乗り込めば間に合うはずである。
高円寺へ駆け込むべし。
(まさに駆け込み寺…!)
そんなワードが脳裏を去来したとかしないとか。
10月2日、人間椅子ブログにて未確認情報を入手する
ある日、不意にブックマークの人間椅子公式Blog(現在は更新停止)を見遣る。
すると怪しげな情報が先月末に掲載されていたようである。
未発表ライブ情報。
未発表ライブ情報
人間椅子のメンバー3人が、別名のひとつのバンドで、ライブに出演します。
もうすぐ、10/5都内某所、縁の深いライブハウスにて。
内容は、人間椅子デビュー直前の演目の再現!!
アルバム未収録の曲や、レアバージョンを演奏します。
超レアです!
是非是非!
どうやら、かの「椅子ニンゲン」の正体は人間椅子本人のようである。
最大級の安堵と共に俄然興味がそそられるライブとなっていた。
当日、筆者は高円寺へと駆け込む
定時である。
筆者はそそくさと立ち上がる。
小走りでゲートに社員証をかざし、更衣室へ駆け込み着替える。そして会社から抜け出す。
駅へと走っている。
ホームに付き、十八時十五分であった。
(駆け込み寺…!)
電車に乗る。
ちょいと乗り換えにミスりつつも、どうにか高円寺にたどり着く。
十八時四十分。
(まさに駆け込み寺!)
ShowBoatは思いの外近かったのである。
「見に来たバンドは?」
と受付にて問いかけられるも、
「椅子ニンゲンです!」
と高らかに返答する筆者がいた。
ドリンク代とチケットを渡し、筆者はライブハウスに滑り込む。
(かのハードロック喫茶ナザレスが開催されているのも確かここだったなぁ)などと考えつつ恐る恐るフロアへ向かうと、開場から十五分ほどにして、半分くらい埋まっているという状況である。
そうして客電が落ち、最初のバンドが入場する。最初はPhychedelic Lollipopであった。
椅子ニンゲン、登場
さて、今回のライブレポートは椅子ニンゲンにスポットを当てているため、そこに絞って書き記したい。
ふと顔をあげればサングラスをかけたごつい坊主頭の男が現れていた。
ローディさんかと一瞬思ったが、鈴木氏であった。
それが一瞬わからなかったのだ。
なぜか、と言えばノーメイクだったからである。
さて、メンバーが入場する。
やはり人間椅子である。
和嶋氏は作務衣姿である。
以下MCを断片的に示しつつ、書き残す。
鈴木氏「人間椅子です」
和嶋氏「椅子ニンゲン、ってことなんですけどね」
鈴木氏「人間椅子です」
いきなり椅子ニンゲンの体裁は破られていた。
鈴木氏「押入れの中のカセットテープを引っ張り出しまして、今回昔のライブを再現演奏することになりました」
そして和嶋氏のギターが唸る。
予想だにしていなかった話に、筆者はものすごく興奮していたことを覚えている。
まずは「造反有理」という曲であった。
バッジーの「脳外科手術の失敗」なる曲に和嶋氏が詞をつけた曲である。
しかし多分に椅子風味である。
続くは「わたしのややこ」である。
この曲はごく稀に人間椅子のライブにて披露されることがある。和嶋氏の自伝「屈折くん」の特典CDでもお馴染みであろう。
ファーストアルバム収録もあり得たが、あまりに歌詞がアレなため、レコーディングはしたもののずっとお蔵入りになっているドロドロナンバーである。
歌謡ロックなフレーズが非常に良い。
鈴木氏「雪駄やりにくい」
やはり裸足での演奏がしっくりくるようである。
脱ぎ始める鈴木氏。
和嶋氏「今日は昔のライブの再現ってことで、僕はファーストアルバムの時に来ていた作務衣です」
客からは歓声が上がる。
確かに何かで見たことがある作務衣であった。
鈴木氏「僕はおとつい買ったんですけどコレ」
という鈴木氏はなんというのだろうか、「バカボンのパパ(腹巻なし)」みたいな服装である。
サングラスはすでに外している。
和嶋氏「こういった未発表曲がいっぱいありました。(カセット?)20枚くらい。いつか皆さんに聞いていただきたいです。どうにか世に出せるように頑張ります。二十一世紀は新たなことをし続けます!」
和嶋氏の宣言に、期待は高まるばかりであった。
鈴木氏「ノろうとしてライブに来たら知らない曲でポカーン、となっていたらすいません」
和嶋氏「僕たちはすごく楽しいんだけどね」
鈴木氏「当時のドラマーは上館さんという人だったんですけどね、ライブ中は一言も話さなかったので、今日はそこもコピーしてノブくんもだんまりです」
ノブ氏「ハァーーーー(息づかいのみ)」
和嶋氏「息するのはOKです」
ノブ氏「ハァーーーー(息づかいのみ)」
そんなやりとりも挟みつつ、物凄いサプライズな一曲が放たれた。
和嶋氏「続いて陰獣です。イカ天の時に、不本意ながら三分に縮めてしまいました。今日は元の七分バージョンです。無駄だったり、痛い部分もありますが聴いてください」
鈴木氏「僕はリハとその前の練習でも間違えていつも通り弾いちゃいました。ドキドキ」
筆者はニヤニヤしながら聴いていた。
生の陰獣が初めてだったのだ。ワウのかかったリフがまずグッとくる。
イントロやブリッジのフレーズの繰り返す回数がいつもより多い。
執拗なリフの繰り返しが気持ち良すぎた。
歌詞も含め、インディーズのバージョンというよりは、20周年記念ベストのバージョンに近い。
ラストは雄大げなコーラスで締めである。
このラストはだいぶ印象が異なっていたため、不思議な気分にもなった。
それにしても貴重な体験である。
すでに感無量な筆者である。
和嶋氏「神経症のあなたに送ります」
続く曲はインディーズ盤から、神経症I LOVE YOUである。
この流れでならもしや!?と熱望していたところ、まんまと演奏してもらえて嬉しすぎる。
ますますニヤニヤが止まらない。
ソロの入りかたが音源よりさらにカッコよく感じられ、(コレが27年目の実力!)などと心中で感嘆した次第である。
鈴木氏「今回昔の曲を聴き返して、びっくりしましたね。俺下手すぎだろう…って。上手くなったよなぁ。和嶋くんはギターうまかったですね」
和嶋氏「なんか速いんですよね。ピッキングが正確っていうか。歌はお互い上手くなってません?」
鈴木氏「歌もよくなってた。なんか上手くなってたよね」
メンバー自身も何やら感慨深そうな感じである。
鈴木氏「残念ながら、今日はコレで最後です。桜の森の満開の下」
ファーストアルバムのラストを飾る大曲であり、共作していた頃の名曲である。
筆者は当時まだあまり聞き込んでいなかった曲でもあるのだが、この時をきっかけとして非常に好きな曲の仲間入りを果たした曲となっている。
完全にハマってしまった。展開がカッコ良すぎるのだ。
珍しくベースソロのようなパートもあり、というか長くとられたインストパートが至高である。
ドラマティックな名曲を最後に聴き、筆者は満足して立ち尽くしていた。
和嶋氏「明後日はROLLYさんのRockROLLYとの対バンです。いつもはのぶくんが告知するんだけどね」
ノブ氏「ハァーーーー(息づかいのみ)」
筆者は(もうチケットは入手していますよ、和嶋さん)などとほくそ笑んでいた。
ということで、三十分程度の短いライブであったが、未曾有の人間椅子体験を果たしたのである。
非常に印象的なライブだったと言える。
椅子ニンゲン@高円寺SHOW BOATセットリスト
- 造反有理
- わたしのややこ
- 陰獣(七分バージョン)
- 神経症I LOVE YOU
- 桜の森の満開の下
おわりに
ということで昔のライブを振り返ってみた。
元々は友人に私的に送りつけていた嫌がらせ手記を発掘したところで、こうして恥知らずにも公開に踏み切ったわけであるのだが。
しかし思い出深いしこうして残しておくことにももしかしたら意味があるかもしれない。
そんな感じである。
いやはや、それにしても人間椅子、今や海外ツアーが決定している…!感慨深すぎる!