加えて、都内のワンマンライブには2011年からほぼ欠かさず通っている筆者が、アルバムにおけるライブ定番曲も紹介する。
人間椅子の恐ろしくカッコ良い音楽に触れるきっかけになればと願ってやまない。
トリ
人間椅子を聴くべし vol.5 「無頼豊饒」更なる充実を見せる18作目のスタジオアルバム
無頼豊饒
2014.06.25 Release
- 表徴の帝国
- なまはげ
- 地獄の料理人
- 迷信
- 生まれ出づる魂
- 悉有仏性
- 宇宙船弥勒号
- リジイア
- ミス・アンドロイド
- グスコーブドリ
- がらんどうの地球
- 結婚狂想曲
- 隷従の叫び
無頼豊穣は、いよいよ充実を見せる再デビュー後二作目にして通算18作目のスタジオアルバムである。前作萬燈籠に引き続いての実にヘヴィな路線、つまりマイナーキー多めでリフ中心である。良い!
いまやライブでの大定番となったなまはげが収録されているのも本作である。
無頼とはここでは自由を指す言葉である。自由であることは豊かさをもたらす。歌詞についてもアルバムを通して自由を説くものが多い。
聴くもの各々における自由は何かと問いかけてくるアルバムとも言える。
と言うことで収録曲についてライブ定番度を交えて触れたい。
無頼豊饒の収録曲紹介
ここではライブでの演奏されやすさの目安を付け加えつつ曲について紹介したいと思う。
ライブ定番度の目安
★★★:かなり聴ける!必修。
★★☆:ちょいちょい聴く
★☆☆:レコ発以外で聴いてないかも
☆☆☆:公認のレア曲
表徴の帝国
ヘヴィながら聴いていて少なからず混乱させられるテクニカルな曲。
鈴木氏をして、「拍が未だによくわからなくなる」と言わしめる。そのためかすでにレア曲候補として公言されている一曲(第十四回人間椅子倶楽部の集いにて次回集い候補として仄めかされている)。
ライブ定番度:☆☆☆
ということで★なしである。
もしかしたら来年の集いに向けた練習のうちに日の目を見ることがないかしらと期待したい!
なまはげ
再デビュー後を代表するといっても過言ではない驚異の力作。おどろおどろしい三人の唸り声に高揚せざるを得ない。激しく音程を上下するリフは東北の土着性を強く感じさせる。
ライブ定番度:★★★
先に述べた通り、最早ライブでは大定番である。ダブルアンコールの曲目となることも多い。ギターソロで爆発的に盛り上がる曲というのは昨今なかなか見られないのではなかろうか!? ソロに盛り込まれた和を醸し出す和嶋氏のギターの妙技も必見。ライブにて刮目すべし!
リード曲としてMVが公開されておりこちらもまた必見である。
地獄の料理人
ライブ定番度:★☆☆
鈴木氏作詞作曲でお馴染みの地獄シリーズである。
あらゆる調理法でもって我々を喰らおうとする鬼の絵が浮かぶ。料理好きな鬼というのもなんとも面白くなる。それにしても鈴木氏の曲は視覚に訴えかけるのである!
迷信
ライブ定番度:★★☆
メタリカのごときスラッシーなリフに驚かされるが、しかしながらまったく人間椅子の音である。
また詞もまさしく人間椅子。鈴木ボーカルの部分が空恐ろしい。安きに転びがちな筆者の心を翻弄してくる。
迷信! と合唱したくなる。
アルバム序盤からキラーチューンが続く!
生まれ出づる魂
ライブ定番度:★☆☆
小気味良いリフと詞に清々しさの宿る一曲。これまた自由を問いかける歌である。ストレートに訴えかけてくる実にカッコ良い詞である!
個人的にはライブでもっと聴きたい一曲。
悉有仏性
ライブ定番度:★☆☆
曲名読めない…! ということで読みはシツウブッショウである。一切の衆生(しゅじょう)は仏性をそなえているということである。わからん。
ともかくギターを何本も重ねたというイントロがなんとも鮮烈で良い。
ソロも晴れ晴れしく解放感に満ちて美しい。
宇宙船弥勒号
ライブ定番度:★☆☆
ノブ氏ボーカル曲。相変わらず痛快ロックンロールである。
曲もボーカルも親しみやすいのだが、不意に飛び出す難解なワードに脳みそが揺さぶられる。そこもまた面白い。
リジイア
ライブ定番度:★☆☆
和嶋氏が奏でる聴き慣れない響きのコードが美しいアコースティック曲。和嶋氏のアコースティックギターのうまさとソングライティングも全開で楽しめる。
セッティング時に恐らく演奏するかどうかわかる(マーティンのアコースティックギターを使う!)。しかしアルバム発売直後以外は聴けていない。
ミス・アンドロイド
ライブ定番度:★☆☆
人間椅子としては珍しいテーマを扱った鈴木氏作曲のミドルチューン。
筆者はこの曲のソロが好きである。
グスコーブドリ
ライブ定番度:★☆☆
宮沢賢治作品からグスコーブドリを題材にした一曲。「オーイオーイオーイ」と言う鈴木氏のコーラスがユニーク。
「ブドリ!」と言うソロへ入る時の掛け声が楽しげ。
がらんどうの地球
ライブ定番度:★☆☆
終末のどん詰まり感に絶望させられるなんとも重苦しい曲。鈴木氏の声が追い討ちをかける。
結婚狂想曲
ライブ定番度:★☆☆
メンデルスゾーンをブラックサバスのごとき音で奏でる冗談めいた曲。イントロは身構えていないとあの曲と結び付かないはず。
是非友人の結婚式でカバーしたいわけだが、よく考えれば楽器が弾けない上に友人もろくにいない筆者には夢のまた夢である。
隷従の叫び
ライブ定番度:★☆☆
ラストは自由への慟哭の歌である。
速度を上げる展開のしかたが荒々しくグッとくる。5:00あたりのソロの音がなんとも奇妙な響きである。
かなりきつい表現ではなかろうか。筆者のような、何に縛られているのかも分かっていないけど閉塞した想いを日々感じている人間の心すら切に締め上げる恐ろしい曲である。
もっと聴きたい曲である。
まとめ
萬燈籠に続く18作目のスタジオアルバム無頼豊穣は、いよいよ充実を見せる人間椅子の勢いを堪能できる名作である。
再デビュー後最重要曲と言ってしまってもよさそうななまはげが収録されている。しかしながらそれだけにとどまらない素晴らしい内容である。是非通して楽しんでいただきたいと強く願うばかりである!
いやはや、それにしても無頼豊穣、面白いものである。