芯から揺さぶりにくるこの3人の音の凄みはなんなのか。
凄まじい轟音のさなか、気づいたら涙が出ていた。
そんなライブを観た!という話である。
筆者
人間椅子「苦楽 ~リリース記念ワンマンツアー~」@Zepp DiverCity
久しぶりの生の音に圧倒される
2時間早く仕事を切り上げ、ゆりかもめに乗り込んでいた。
仕事用のシャツからライブTシャツに着替えるとやや肌寒い。
そう、この日は人間椅子のツアーファイナルである。
どれだけ待ち侘びたことか。
いつ以来なのかといえば、2019年の12月13日だ。
映画にもなった中野サンプラザホールでの公演以来ということになる。
その間にオンラインでのライブもあった。
オンラインとはいえあまりに興奮したことを覚えている。
とはいえ人間椅子の生のライブを観たい、という想いもまた募るばかりであった。
そんな想いも燻りまくった2021年夏、リリースされた、時代を照らすアルバム「苦楽」のかっこよさたるや!
それを引っ提げてのツアーがいよいよ敢行されたわけである。
そしてこの日、Zepp DiverCityにてツアーファイナルを迎えていた。
コロナ禍二度目の夏も終わろうとしていた。
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台場駅から会場へと移動すれば、人間椅子のTシャツやパーカー、法被、コアチョコの乱歩TシャツにスケキヨTシャツの人と思い思いの格好のファンがちらほらと集まってきていた。
そんな様子にも懐かしさがある。
今回は指定席制のため、時間になるとチケットを持っている人が随時検温して入場とあいなった。
セルフもぎりしてドリンク代を電子マネーで払って入場する。
筆者は前方ブロックのなかなか観やすい席を幸運にも引き当てていた。
席にてソワソワしながら開演を待った。
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OPSEは此岸御詠歌であった。
待ちに待った人間椅子が入場してくる。
ステージ中央で一礼した和嶋氏にノブ氏が続く。
ノブ氏の痩せた姿にハッとする。
鈴木氏が最後に入場し、3人が揃う。
この高揚感は本当に久しい。
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そして戦慄すら感じる緊張感に満ちたアルペジオが響く。
「夜明け前」である。
続くリフのそのあまりに重い音は心にズシリと沁み込んでくる。
夜明け前は苦楽のラストを飾る曲だ。
ラスト曲が一曲目に持ってこられたことにまず驚いた。
しかしその今の時代に向けて込められた意志に想いを馳せ、それを最初に持ってくる姿勢にすでに目頭が熱くなっていた。
何度も押し寄せる圧巻のリフに身を任せる。
ライブ演奏の凄みを、人間椅子の凄みを改めて思い知るばかりであった。
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アルバム「苦楽」から神々の行進、杜子春、宇宙海賊が披露される。
MVも公開されている杜子春ではイントロでのノブ氏のコンガとマラカスのプレイも披露しつつ、これまたヘヴィなリフを轟かせる。
宇宙海賊では和嶋氏による宇宙感全開のアナログディレイのしゃがみプレイを全世界配信にて披露しつつ、テルミンソロもこなしていた。
「新曲」として披露された無限の住人 武闘編もライブで聴きたかった曲であり個人的にはかなり嬉しい一曲であった。
洗礼、恐怖の大王をはさみつつ再び苦楽より人間ロボット、恍惚の蟷螂、疾れGTと続く。
恍惚の蟷螂は地獄シリーズ的な前のめりなリフがたまらない。
哀愁を感じさせるギターとバイクを彷彿とさせる音使いにしびれる疾れGTもかっこよすぎる。
「二十世紀葬送歌」から暁の断頭台は意外なチョイスだった。
のたうつリフはあまりにヘヴィで心地よい。
そしてノブ氏のボーカル曲、至上の唇ではラストにドラムソロが披露された。
超自然現象はやや珍妙な詞とはうらはらに疾走感を大いに感じさせるし、間髪入れずつなげたダイナマイトは爆発的に盛り上がった。
この勢いは針の山にも匹敵するぞ!と興奮していたところ本編はこれにて終了、といままでにない展開と相成った。
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アンコールでは昨年に引き続き中止となった弘前のねぷたに思いを馳せつつねぷたのもんどりこが披露される。
観客もアンコール待ちにて一旦は落ち着いたと思われるが、このねぷたのもんどりこの狂乱のイントロから、また一気にボルテージが高まるのを感じた。
そして最後の曲は無情のスキャットである。
この曲もまた、凄まじく重いリフが攻め立てるように繰り返される。
8分超えの曲の中で音を積み上げて積み上げて、辿り着いた最終盤の高揚といったら!
そして最高潮のなかで放たれる和嶋氏のソロは至高である。
観られて本当に良かった。
生の音に込められた力に感動がやまなかった。
セットリスト
OPSE 此岸御詠歌
- 夜明け前
- 神々の行進
- 杜子春
- 宇宙海賊
- 無限の住人 武闘編
- 洗礼
- 恐怖の大王
- 人間ロボット
- 恍惚の蟷螂
- 疾走れGT
- 暁の断頭台
- 至上の唇
- 超自然現象
- ダイナマイト
アンコール
- ねぷたのもんどりこ
- 無情のスキャット
おわりに
ということで人間椅子のライブを観た!という話であった。
音楽でここまで感動するのか、と思わされた。
圧倒的な説得力を持った3人の音に打ちのめされてきた。
一曲目から泣き、ラストで更に泣いていた。
久しぶりの人間椅子のライブである。
楽しみにしまくってたとは言え、まさか重いリフで泣かされるとは思っていなかった。
これもコロナ禍とは言えひたむきに音楽と向き合ってきた、3人の変わらない姿勢から生み出されたものに違いない。
一方では、変化も観られた。
ノブ氏がかなりスリムになっているのは驚いた。
結石発生以来気をつけている鈴木氏も最後に見て以来少し痩せた気がする。
インタビュー等を読む限りも3人共健康には気を使っているようだ。
ファンとしては嬉しいと思う。
セットリストにも趣向が凝らされていたように感じる。
なにより針の山がなかったのには驚いた。
しかしダイナマイトもまた素晴らしいのである。
また、いつもより曲数が少なかったようにも感じられた。
ダブルアンコールまであるのが通例だったが今回はアンコールのみで終了となった。
コロナ禍においてもしかしたら時間の制限があったのかもしれないし、あるいは体力的な変化によるのかもしれない。
しかしそれらは些細なことでもあり、とにかく彼らなりのステージで、生涯現役でその音を追求してほしいと願うばかり。