そんな方々へ、つまみ食い的にメタルを愛好する筆者が好きなアルバムをそのバンドの紹介をからめつつ、脈絡なく紹介させていただく。
フィーリング重視のゆるい紹介にはなるがメタルにあまり馴染みのない方々にとって、気軽な入り口となれば幸いである。
圧倒的変態性!
トリ
ラムシュタイン不足に干からびた全ての人を奮い勃たせた傑作!
LINDEMANNの「SKILLS IN PILLS」について記す!
メタルつまみ食い LINDEMANN「SKILLS IN PILLS」
SKILLS IN PILLS の収録曲一覧
2015/06/23
1.Skills in Pills
2.Ladyboy
3.Fat
4.Fish On
5.Children of the Sun
6.Home Sweet Home
7.Cowboy
8.Golden Shower
9.Yukon
10.Praise Abort
Lindemann are :
ティル・リンデマン(Till Lindemann) : VOCALS
ピーター・テクレン(Peter Tägtgren) : All Instrument
Lindemannとは?
LINDEMANNは次の二名による驚異のメタルユニットである。
一人はLINDEMANNの名を持つ男・ティル・リンデマンである。ドイツを代表するインダストリアルメタルバンドであるRAMMSTEINのフロントマンである。
そしてもう一人がスウェーデンのデスメタルバンド・Hypocrisyやソロプロジェクトで活動し、プロデューサーとしても名高いピーター・テクレンである。
この二名タッグを組んだメタルユニットということで当時はひどく興奮した。
というのも、RAMMSTEINは2011年以降活動を休止ていたのである。
その最中、動き出したプロジェクトということでRAMMSTEIN大好きな筆者は歓喜したのであった。
LINDEMANNの音楽性はRAMMSTEINのごとく攻撃的なインダストリアルメタルであり、しかしながらドイツ語詞ではなく全編英語詞を採用している。
荒々しく響くティルのドイツ語が本作では聴けないのだが、逆にどこか丸みを帯びた響きの英語というのが対比があり面白い。
ちょっとしたパラレルワールドRAMMSTEINを味わえる名作と言える。
ティル・リンデマン
1963年生まれ、ライプツィヒ出身。1993年にラムシュタインを結成、95年にアルバム『Herzeleid』でデビューを果たす。ドイツ語のヴォーカルと機械的な重低音からなるインダストリアルなメタル・サウンドという独自のスタイルで、母国ドイツだけでなく全ヨーロッパでヒットを記録する。そのサウンドにほれ込んだデビット・リンチ監督が自身が監督する映画『ロスト・ハイウェイ』に彼らの曲を使ったことで、その人気は全米へと飛び火していく。97年にはセカンド『渇望』を発表、98年にはKORN主催のツアーに同行するため全米ツアーを行い、その圧倒的なパフォーマンスとシアトリカルなステージングで大きな話題を呼ぶ。その後も2001年に『ムター』、2004年に『ライゼ・ライゼ~南船北馬』、2005年に『ローゼンロート』と発表し、ヨーロッパの音楽賞はもちろんのことグラミー賞にも何度もノミネートを果たす独逸が生んだ巨人として知られるようになる。2009年に『最愛なる全ての物へ』を発表、2011年にベスト・アルバムを発表し、現在は活動を休止している。
ピーター・テクレン
1970年、スウェーデン出身。ギタリスト/ヴォーカリスト/キーボーディストでもあり、プロデューサーやエンジニアとしても知られる、スウェーデンが誇るマルチ・タレント・アーティストでありメタル・シーンにおける重要な存在感を放つ職人。ヒポクリシーやペイン名義で精力的に活動を続ける合間に、ダーク・フューネラルやディム・ボガー、チルドレン・オブ・ボドムといったアーティストのプロデュースも手掛け、他にもデス・メタル・シーンのスーパーグループ、ブラッドバスへの参加やデス/グラインド・コア・バンド、ロック・アップへも参加するなど、まさに八面六臂の活躍を続けるアーティストである。
WARNER MUSIC JAPANアーティストプロフィールより引用
曲は全てピーターが、詞は全てティルが担当している。
ティル担当ということでこれまた相当な変態性を帯びた世界観が多角的に味わえる。
是非日本語版のCDを入手し対訳を楽しむべきであろう。
その一端を垣間見えるオフィシャルPVを貼っておく次第である。
Praise Abort
アルバムラストを飾るPraise Abort。
かなり過激な歌詞である。
しかも聴き取りやすい。
Fish On
謎の世界観が面白いPVだが、なかなかエロい。
SKILLS IN PILLSのおすすめ曲
全10曲収録のSKILLS IN PILLSである。
筆者が特に好きな曲を3曲ピックアップして紹介したい。
Skills In Pills
「死にたい時もハイになりたい時も薬を飲めばいいじゃん!」という歌。
挑発的な詞も去ることながら、ティルのボーカルワークも秀逸である。
ささやくような序盤に始まり、中盤でRAMMSTEINでのような力強い歌唱になる。
そしてコーラスでは伸びやかに響くティルの美しい低音のボーカルがたまらん。
バッキングもまたよし。厚みのある重厚な展開が聴きごたえあり。
Golden Shower
これまたタイトルからかなりアレな方向性である。
当然歌詞もかなりのやばさであり、つまり最高である。
力強い歌唱と、偏執的に押さえつけるようなリフがたまらない。
うっすら聴こえるキーボードの音色がなんともラムシュタインっぽい。
じょばじょばなSEも良し。
Yukon
不意に超雄大な自然を感じさせる美しい曲。
実際にティルがユーコン川を下ったときに詞が出来たのだという。
その時の恐怖や静寂の中で詞を書き綴ってピーターへと送りつけ、すぐさまピーターにより川の流れを感じるピアノのフレーズが作られたという。
ちなみにこのレスポンスが可能だったのも今回英語詞を採用したゆえというのもまたティルにより語られている。
合わせてヘドバンVol.7を読むべし
熱苦しくて最高なメタル特化型紙メディア「ヘドバン」Vol.7にて当時(2015年)に来日していたティルがインタビューを受けている。
Yukonのところに記したようなエピソードをはじめとして貴重な話をしているため、ぜひ「Skills In Pills」を視聴しつつ読むべきであろう。
またその中で語られる「挑発するのが好き」という話が筆者としては非常に興味深かったので一部引用したい。
挑発というのは、人に考えさせることができなければ成立しない。(中略)人は考えさせられた時に初めて、自分の行動を顧みることになる。(中略)音楽で挑発すること。それは、人を音で揺り動かすことだ。俺が興味を惹かれるのは、人が心を開いて、少なくとも何か意見を持つということ。
ヘドバン Vol.7 P171より引用
RAMMSTEINやこのLINDEMANNでの挑発的な作品の数々はこのような考えのもと作り続けられてきたのだろう。
おわりに
ということでLINDEMANNの「SKILLS IN PILLS」の紹介であった。
RAMMSTEIN不足に喘ぐ全ての人におすすめしたいのはもちろん、物足りない日常を感じる人に是非手に取っていただきたいアルバムである。
いやはや、それにしてもLINDEMANN、面白いものである。