とある女の子が、妙な興味からアイドルのオーディションに応募したという。
トリ
彼女はあることを知りたくて応募したのだ。
知りたかったのは次のようなことである。
- 「なぜ世にこんなにもアイドルグループがあるのか?」
- 「なぜオーディションに毎回何千という人が集まるのか」
- 「アイドルになりたい女の子とはなんなのか?」
いたのである。
そんな女の子の著書について記す。
【本の紹介】目を合わせるということ【BiSH・モモコグミカンパニー】
さてこの本は、数年前までただの女子大生だった女の子・モモコグミカンパニーが書いた本である。
彼女が入ったあるアイドルグループでの活動とそのなかで感じたこと、そしてモモコの中の変化について書かれている。
モモコグミカンパニーとは?
モモコグミカンパニーとは誰なのかと言えば、アイドルグループBiSHのメンバーである。
BiSHは結成3年にして幕張メッセでのワンマンライブを成功させミュージックステーションにも出演しているほどの勢いがあるグループである。
2015年に結成されたアイドルグループ。
メンバー(2018年12月現在)
- アイナ・ジ・エンド
- セントチヒロ・チッチ
- モモコグミカンパニー
- ハシヤスメ・アツコ
- リンリン
- アユニ・D
現在メジャーにて「楽器を持たないパンクバンド」というコンセプトで活動中。
2014年に解散したアイドルグループBiSの仕掛人である渡辺淳之介氏とサウンドプロデューサーであった松隈ケンタ氏のタッグが「もう一度BiSをやる」と宣言し始動。
普通の女の子がモモコグミカンパニーになる
彼女自身がもともと何かしらのアイドル的な素養、例えば歌やダンスをしてきた、といったことがあるかと言えばそんなことはなかった。
ならば圧倒的な容姿を兼ね備えていたかというと、恐らくそうではない。
小柄でかわいらしいが、「普通の女の子」という向きが強いだろう。
しかし冒頭に記したようなある珍妙な思いからふとオーディションを受ける。
そこで選んだ事務所が、たまたまWACKであった。
前身であるBiSのことやその仕掛け人たる渡辺淳之介氏のこと、数々の名曲を生み出した松隈ケンタ氏のことを知らずに、たまたまその門を叩いてしまったのだ。
そしてそのオーディション会場で渡辺氏と出会い、なぜか合格し、氏が世に仕掛ける新たなグループの初期メンバーとなることを決めるのであった。
そこについては言及されていない。
ちなみに彼女の担当は「あまのじゃく」である。
モモコグミカンパニーは詞でBiSHの力となる
WACKでは各グループの楽曲に関して、社長である渡辺氏が作詞をすることが多々ある。
特にBiSHにおいては勝負を仕掛けるような曲にはその傾向が強い。
またメンバーが作詞に携わるというのも特徴である。
誰の詞を使うかは決まっておらずに、皆が書くという。そこから渡辺氏が選出するのだ。
渡辺さんが選ぶメンバーの歌詞にはメンバーそれぞれが生きてきた本物の感情が入っている。
モモコは本の中でこのように記している。
彼女たちの詞は飾ることがなく、切に生きてきたそのものを晒してくる。
そこもまたBiSH、延いてはWACKの魅力に違いない。
そんな中でモモコの作詞した曲はBiSHメンバーのなかでもダントツに多い。
「目を合わせるということ」によると自身でもBiSHでの存在意義を作詞におかなくては、と思っていた時期があるようだ。BiSHに爪痕を残すべくモモコは必死に詞を書くのだ。
そんなモモコに対しては渡辺氏からの作詞における要求も高まり、「譜割りまで自分でこなしたうえで提出」というようにレベルが上がっていったという。
そしてあるときは、渡辺氏が作詞することが決まっていた歌のデモを聴いて思わず自分で作詞したいと感じた。
頼まれてもいない詞を必死に書き上げて渡辺氏に送った。
そしてその詞は渡辺氏の賞賛とともに採用される。
GiANT KiLLER収録のNothig.という曲である。
BiSHを知らなくても読むべし
この「目を合わせるということ」を読むときに、BiSH、BiSのことを知らなければ読む意味がないのかと言えば決してそうではない。
この本には彼女がBiSHでの活動を通して、見て体験して感じたことが瑞々しくも書かれている。
若い一人の女の子の、あまのじゃくながらも自分の生き方に向き合おうという思い、戸惑いながらもどうにか歩む様が描かれているのである。
昨今溢れかえるアイドルのなかでも異彩を放つグループのことを、一人のメンバーの視点で覗き見れるというのがこの本の面白いところだと筆者は思う。
もちろん清掃員も読むべし
清掃員(BiSHファンの総称)も当然楽しめる本である。
本の構成としては5つのチャプターに別れており、オーディション前後からミュージックステーション出演までの期間のモモコの体験や、また自身の生い立ちについて書き記されている。
更にはその体験のなかで自らがどう変わっていったのかを書いているのだ。
また当然多くのことを共に体験してきたメンバーとの関係性もモモコの視点で描かれている。
6人の人間が集まれば当然個性が出る。
時にぶつかり、支えあい、自らの固定概念を壊してくれるメンバーがモモコを強くしてきたことが伝わるはずだ。
きっとBiSHをより好きになる。
おわりに
ということでモモコグミカンパニー著「目を合わせるということ」の紹介であった。
この記事が、BiSHを最近知った方やまだBiSHを知らなかった方がBiSHを知るほんの少しのきっかけになれば幸いである。
そしてこの本を手に取って、よりBiSHを好きになってくれれば望外である。
最初は素人っぽさを武器にどうにか立ち回っていたモモコが、メンバーと過ごし活動を重ねて強くなっていく様に少なからず感動した次第である。
余談だが筆者はと言えば、こんな記事を書いておきながらもBiSHのライブは生で一度しか見ていない。
そのライブで想像を遥かに超えて上手くなっていたモモコを目の当たりにして驚いたものである。
経験値もあるだろうが絶対に努力したからこそのものだと感じずにはいられなかった。
そんなこともあって、この本を読んで余計に感動したのかもしれない。
また余談だが、活動の中でどんどん可愛くなっていくモモコにも目が離せなかった。
この本に掲載されているデビュー当時からの写真の数々を見ればその様がわかるはずだ。
いやはや、それにしてもモモコグミカンパニー、面白いものである。