【映画館】おんどりの鳴く前に
ルーマニアのパウル・ネゴエスク監督の映画。
野心を失い、何も起きないド田舎の村でテキトーに職務をこなすおまわりさんイリエが、ある事件をきっかけに村の腐敗を目の当たりにしちゃってどうしよう!??となるサスペンス。
腐敗の仕方が、日本においてもともすればよくありそうな構図であり、ある種の人間の弱さを突きつけられるようでもある。凡人がそのもろもろを振り払おうと勇気を振り絞るラストシーンに宿る無様さと美しさに胸打たれる。
【映画館】ハイパーボリア人
先週観た『オオカミの家』のレオン&コシーニャ監督コンビの新作。今回は実写ベースだが、アニメーションも人形も影絵も織り交ぜたよりカオスな映像で構成されている。
キャッチコピーが言いえて妙であり、「オオカミの家より難解で、オオカミの家よりおもしろい」映画である。
女優で臨床心理士のアントーニアが、患者の幻聴をもとに失われた映画の話をレオン&コシーニャに話したところ、それを探しに行く映画を撮ることになる、みたいな話。メタ構造を行き来するような唐突さとアクロバティックな表現技法でまったくもって一筋縄ではいかない話である(正直パンフやインタビューを読んだ今もよくわかっていない)。今回もやはりチリに影を落とすナチスの名残のようなものを扱っている。音楽も音も良かったりする。また日本版のキービジュアルがかなり良い(思わずポスターほしくなっていたが売り切れていた…)
わかんないけど2回目行きたい気もしている

【映画館】ミッシング・チャイルド・ビデオテープ
日本ホラー映画大賞受賞作品。
タイトルの通り、ビデオテープの映像がある種鍵となっている作品である。
主人公兒玉の幼い日に弟が山の中の謎の廃墟にて姿を消すのだが、兒玉は当時父親のビデオカメラで撮影することにハマっていたため、たまたまその失踪の瞬間を収めていた。そのテープがある日母親から送られてきて、霊感の強い同居人とともに山へと向かうことになる、という話。
ノーCG、ノー特殊メイク、ノージャンプスケアでありつつも非常に素晴らしい演出と脚本でもって恐怖が込み上げてくるホラー映画となっていた。

ビデオテープ映像が味ありまくり…!
総じてかな〜りこわかった…おすすめ!
【Prime Video】ドリーム・シナリオ
サブスク解禁、ということで吹き替えで観てみた。

やはりニコラス・ケイジの繊細な演技がいい映画だし、集中して見れるときは字幕のほうがイイな〜


【映画館】いもうとの時間
東海テレビ放送製作の、名張毒ぶどう酒事件を追ったドキュメンタリーの4作目にあたる番組を映画むけに追加取材・再編集した作品。冤罪の理不尽さ、関わる人々のあまりに長い苦悩、非道な裁判と日本の司法の暗部が描かれる。
ラストに提示されるのだが、憲法76条第3項はつぎのような内容である。
『裁判官はその良心に従い、独立してその職権を行い、憲法及び法律にのみ拘束される』
映画では裁判官たちの顔が映し出される。死刑を支持し最新を棄却してきた何人もの裁判官たちは何を想い、判断を下しているのか。中には冷静に判断を下す裁判官もいるのがせめてもの救いであったが…。そのあまりに異常な構造に、なにやらある種の結託やらよからぬ意思があるように思えてならないのである。人ひとりの人生を何だと思っているのか、という憤りがやまなかった。
唯一の再審請求人の妹・岡美代子氏94歳の残された時間に、せめてこの事件についてだけでも事態が好転してほしい。

ここで描かれている日本の司法環境の危うさはおかしすぎる…
「誰もが誰かの身内なのだ」というナレーションが数回はいるのだが、裁判官をはじめとした責任ある人たちはそのことが想像できないのだろうか??岡さんや、映像に出てくるお母様、弁護団の方々、特別面会人の方などは、辛くおかしな状況を経てなお人間として生きているさまがありありと伝わってくる人たちだった。一方であの裁判官達のどこか虚ろな目は何なのか…??
ちなみにナレーションに仲代達矢氏が起用されている(非常に力強くイイお声である)。
【映画館】スキナマリンク
カナダのホラー映画。
幼少期に一人で遺影で留守番をしていたときに覚える恐怖感、のようなものを徹底的に煮詰めた映像のみが延々と映し出される。
一応話としては、真夜中ふと起きると両親が消え更には自宅のドアや窓やトイレが消える、という珍現象に見舞われた幼いふたりのこどもが家をさまよう、というもの。
薄暗い家の中で非常にノイジーな映像とローファイな音、そしてやたら居心地の悪い画角での映像がやや断片的に繋げられる100分を体感できる前衛的な印象のホラー映画であった。

わりと観てるのキツかった…好きな人はこういう映像好きなのかもしれんが。
あと謎のジャンプスケアが無闇に数回あんのがな〜