この日有給を半ば強引に取得した筆者は万全を期して渋谷へと向かっていた。
トリ
なにしろ人間椅子のツアーファイナルがあるのだ。見逃すわけにはいかない。
また今回は所謂レコ発ではないツアーである。
一体何が聴けるのか!? そんなことを無闇に想像する楽しみがあるのも嬉しい限りである。
と言うことでライブの様子をお伝えしたい。
実際に観に行かれた方、ニコ生で観られていた方も多いだろう。そんな方々にあえて言うまでもないが、端的に言って最高のライブであったことはここに記しておく。
曲の演出も創意工夫が凝らされており、実に人間椅子らしい新しさに満ちていたのではないだろうか。
人間椅子『恩讐の彼方~人間椅子2018年晩夏のワンマンツアー』ファイナル@渋谷 TSUTAYA O-EAST
平日に人間椅子ファン集結
この日は平日にも関わらず、人間椅子ファンが渋谷のTSUTAYA O-EASTに詰めかけていた。
入場後もなるべく前へ詰めるよう、何度か会場スタッフの方が声をあげていたほどである。
密かにチケットの番号が非常に若かった筆者は初めて最前列に位置付けていた。振り返れば多くの観客の姿がそこにはあった。なかには仕事帰りとおぼしきスーツ姿の方も見受けられる。
皆楽しみにしていたに違いない。
全国を回ってきた人間椅子のツアーファイナルである。相当の仕上がりでもって我々を楽しませてくれることを期待せずにはおれないだろう。
ちなみにこの日、販売予定であったツアーTシャツの数が間に合わないほどで、ライブ前の先行物販から通販の受付がされていたほどである(筆者ももちろん購入の手続きをした)。
定刻を少し過ぎ、フロアが暗転する。
オープニングSE「此岸御詠歌」の仏具の鈴の音が鳴り響く。
レア曲がファンを揺さぶる! 円熟のツアーファイナル
来年にはバンド生活30年を迎える人間椅子である。持ち曲は200を越え、10年ぶりに演奏するような曲すらあるわけである。
この日、鉄格子黙示録から命売りますまで、新旧・定番レア曲入り乱れた以下のセットリストにて演奏された。
- 鉄格子黙示録
- 晒し首
- 時間からの影
- 夜間飛行
- 品川心中
- どだればち
- 野垂れ死に
- ダンウィッチの怪
- 命売ります
- 心の火事
- 黒猫
- 悪夢の添乗員
- 地獄の球宴
- 雪女
- 針の山
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- 辻斬り小唄無宿編
- 地獄のヘビーライダー
en2
- なまはげ
人間椅子のライブが好きな方はリストを一眼見てわかる通りレア曲が非常に多い。
晒し首、時間からの影、夜間飛行、野垂れ死に、ダンウィッチの怪と言ったレア曲がまたどれもすごく良いのである。
アルバム無限の住人からは今回3曲も演奏されているが、晒し首は珍しい。最後にキーが上がりソロへと雪崩れ込む感じにグッときた。
時間からの影はラヴクラフトシリーズの一曲。入りに奇怪な音をギターで鳴らす演出が非常によい。一気にダークで不穏な雰囲気を作り上げていた。
野垂れ死には先のファンクラブの集いでも演奏されていた。その時に手応えを掴んだのであろうか。なんともやさぐれた音であった。
ダンウィッチの怪に至って筆者は、迫力あるラストの盛り上がりと感動で若干泣いてしまった。
そしてもちろん定番曲も素晴らしい限りであった。3人による演奏の力、表現力に圧倒されるばかりである。
以下、演出やMCに絡めて曲について記したい。
夜間飛行 〜鈴木氏、ベース弾きながらテルミン演奏
入場した時点でテルミン用と思しきアンプが置いてあったのを注視していた筆者だが、今回宇宙シリーズ第3弾らしい夜間飛行にて使用された。
和嶋氏はますますテルミンの表現力を高めているように感じる。そして和嶋氏が奏でるのはもちろん、なんとこの日鈴木氏がベースを弾きながらテルミンを奏でると言う高度な(?)技法を見せるのであった。長いベースのネックを活かして、そのヘッドでもってテルミンをうまく鳴らすのである。
曲自体も緊張感のあるメインリフと激しいソロ、そしてゆったりと漂うような展開がなんとも良いものである。
そんなサプライズもありつつレア曲がたっぷり生で聴けると言うのはなんとも贅沢である!
どだればち 〜廃盤の「踊る一寸法師」再発か!?
津軽三味線風のギターを鳴らす和嶋氏だが、この日「踊る一寸法師」収録のどだればちにてその手腕を余すところなく見せてくれた。
なんともいなたい、ねっとりとした演奏がたまらない一曲である。
最前にいられたため筆者などは目の前で(それこそ手が届きそうな距離で)二人が演奏する様を観てこれまた感涙が滲んだ。
それくらい盛り上がり、感動してしまったのである。
曲中の「あらどした」の掛け声を観客も一緒になって上げていたのも印象的であった。
MCにて何度か30周年にむけての意気込みを語ったメンバーであるが、現在廃盤になっている唯一のインディーズ盤「踊る一寸法師」について、再発の可能性を示唆する発言があった。これには多くの観客が声を上げていた。
筆者もまた踊る一寸法師は所持していないため、これは是が非でも実現してほしいと願うばかりである。
人間椅子の30周年は、どうやら全く見逃せないものになりそうである。
悪夢の添乗員 〜アニキ曲で大合唱
アニキことノブ氏のボーカル曲が毎度一曲演奏されるが、今回レア曲ではなく最近曲であった。つまり悪夢の添乗員だが、これまた観客による大合唱を誘発するのである。
いつの間にかこんなにも一体感の生まれる曲になっており驚くばかりであるが、これも曲とアニキの魅力によるものであろう。
怒涛の本編ラスト
生首コールが飛び交う地獄の球宴、晩夏に雪女と来て最後一発針の山である。
キラーチューン続きで大はしゃぎのフロアである。人間椅子の針の山はやはり至高である。楽しすぎて上げ疲れていた腕も自然と振らざるにはいられない。
こうして本編は一旦終了した。
すぐさまアンコールが巻き起こる。
アンコール 〜お手製・地獄のハンドル!? 一大アンセムと化した地獄のヘビーライダー
ファンのアンコールに応え、お馴染みのツアーTシャツに着替えた和嶋氏とノブ氏と、白装束に着替えた鈴木氏が登場。
ファンクラブの集いでも披露された辻斬り小唄無宿編がツアーファイナルでも演奏された。
これまた和嶋氏の三味線のごとき和風演出が光る。
そして極めつけはバイクのヘッドライトとハンドルを模したアイテム、通称地獄のハンドルと特大の人間椅子フラッグが登場した地獄のヘビーライダーであろう。
ちなみに地獄のハンドルは和嶋氏お手製であるとのこと…!ツアー先の四国から一人新幹線で舞い戻ってパーツを確保したらしい。
曲の前に地獄のハンドルを握る鈴木氏にあわせて、和嶋氏がエンジンのごときギターを鳴らし、特大の人間椅子フラッグはノブ氏により大きく降りかざされた。フラッグにはツアーにて発売されたヘビーライダーTシャツのイラストが採用されている。
明日のツアーファイナルTSUTAYA O-EAST公演の物販先行販売は、16時半を予定しています! pic.twitter.com/5Q43nRTD2s
— 人間椅子staff (@planetcaravan69) 2018年9月6日
公式のツイートより
こんな演出をされては盛り上がらないわけがない。筆者もまた地獄のヘビーライダーはアルバム異次元からの咆哮においてもっとも好きな曲である。終始腕と首を振るうばかりであった。
間奏では鈴木氏と和嶋氏がバイクに2人乗りするかのような仕草をしていたが、その際スタッフの川端氏が登場しフラッグを降ると言う演出が入るのはなんとも微笑ましい気持ちになる。
掛け声パートが多い地獄のヘビーライダーであるが、観客の掛け声もいつも以上に大きかったと筆者は感じた。
この曲に対してTシャツやフラッグを作るほどでの嬉しい盛り上げ方である。バイク好きの3人もきっと非常に好きな曲なのだろう。
参考
人間椅子が愛車で登場!? バイク愛も込められたニューアルバム制作秘話ぶっこみインタビュー!耳マン
ダブルアンコール 〜30周年への想いと新譜宣言「かつてない恐ろしいアルバムを」
最後の最後、ダブルアンコールで三度登場したメンバーである。
ここで30周年記念アルバムの制作が宣言された。和嶋氏からは「かつてない恐ろしいアルバムを作る」と力強く語られた(前作異次元からの咆哮制作時にはこの「恐ろしいアルバム」発言が自ら枷となっていたようだが、今回はそれでもなお宣言している。これは和嶋氏の30周年に向けたある種の覚悟では?と期待せずにはいられない)。
そして最後はなまはげである。地鳴りのようなイントロとカッコよすぎるリフ、もはや曲芸のごとき熱く細やかなソロ。聴きごたえの塊に、終始盛り上がってきた観客の勢いは全く衰えずに増すばかりであった。
最後の最後まで盛り上げてくれる人間椅子である。
まとめ 恩讐の彼方へ
人間椅子『恩讐の彼方~人間椅子2018年晩夏のワンマンツアー』ファイナルにて全18曲が演奏された。多くのレア曲を交え大歓声の中ツアーを完遂したのであった。
悲喜交交を越えて人間椅子が辿り着こうとしている30周年、そしてさらにその先が楽しみでならない。
と言うことであまりに有意義な有給を過ごすことができた筆者であった。
いやはや、それにしても恩讐の彼方、最高の一言に尽きる。
【参考】ライブの写真
ライブの写真はいち早く掲載された以下ライブレポートを参照されたし。
特に地獄のハンドルは是非見ていただきたい。
参考
人間椅子、晩夏のツアーファイナルでみせた〈恩讐の彼方〉WWSchannel
余談だが、まじでプロの文章とプロの写真の速度とクオリティが凄すぎる! と面食らう。毎度のことではあるのだが。
【参考】Spotifyにてセットリストが公開されている!
と言うことで以下に貼り付けておく。是非聴いてみていただきたい(どだればちのみ配信未対応の模様)。
ライブ概要
人間椅子『恩讐の彼方~人間椅子2018年晩夏のワンマンツアー』ファイナル@渋谷 TSUTAYA O-EAST
出演:人間椅子
日付:2018年9月7日
時間:開場18:00 / 開演19:00
場所:渋谷・TSUTAYA O-EAST
会場一口メモ TSUTAYA O-EAST
そばに同系列のライブハウスがあるので注意
TSUTAYA O-EASTのすぐそばに、TSUTAYA O-WESTなど系列のライブハウスがある。道路を挟んでEASTとWEST向かい合っており、大きく名前が書いてあるので間違えないようにすべし。
ファミマ道玄坂中央店で態勢を整えると吉
会場から2分のところにあるファミリーマート道玄坂中央店が非常に便利。
店内は通路が広い。イートインスペースもあり、商品を購入しつつちょっとした腹ごしらえと時間調整に便利なコンビニである。トイレもついでにお借りしておくと万全であろう。男女別になっている。