このシリーズではBiSH、BiS、GANG PARADE、EMPiREを擁する音楽プロダクションWACKの音源を紹介する。
曲はもちろん、背景などにも触れつつ紹介していきたい。
ロックでエモーショナルな曲の数々をひもときつつ、これからWACKの音楽に触れる方の少しの助けになれば幸いである。
トリ
2019年8月13日、「さてフラゲだ!」と意気揚々とBiS「Brand-new idol Society」を買い求めに行くべく準備をしていた筆者であった。
ふと観たTwitterによると以下のようなお知らせが。
【重要なお知らせ】
マナコ・チー・マナコに関しまして
本日12時をもちまして、BiSを脱退するはこびとなりました。
詳細については、HPをご確認ください。https://t.co/aQupVFSFjK— BiS−新生アイドル研究会-オフィシャル (@BiSidol) August 13, 2019
CD発売直前にしてマナコ・チー・マナコ氏脱退である。
「思っていた方向性との違い」が少なからず発生していた、というようなことのようである。
マナコ氏は前日のイベントを急遽体調不良で休んでおり、研究員の中にはやはり不安を覚えた方もいたはずであろう。
そういえばBiSHのデビュー直前にもユカコ・ラブデラックス氏が脱退したよなぁ、と言ったこともぼんやりと思いつつ、こればかりはやむなしとアルバムを買いに行ったのであった。
ということでアルバムの紹介である!
かなり良いアルバムだということは事前に述べておきたい。
筆者的にはWACKでも屈指のアルバムである。
BiS「Brand-new idol Society」を聴くべし
- STUPiD
- BiS-どうやらゾンビのおでまし-
- SURRENDER
- リフレイン
- BiS3
- this is not a love song
- 1,2,3!!!
- absolutely meeeeee!!
- ナンデスカ?
- thousand crickets
- teacher teacher teacher
- strawberry girl
- LET’S GO どうも
BiS「Brand-new idol Society」はこんなアルバム
第3期目に当たるBiSだが、第1期、第2期の楽曲とは完全に切り離されて制作されているアルバムになる。
第2期目のデビューアルバムは「Brand-new idol Society2」だったのだが、今回は「Brand-new idol Society」である。
このタイトルは第1期目のBiSのデビューアルバムと同名である。
そしてジャケットも第1期を踏襲していることがわかるだろう。
13曲収録されており、その曲はどれも非常に素晴らしい。
洗練された楽曲に初々しい彼女らの声が乗るわけだが、その声は皆個性がありそこがともかくとても魅力的と言える。
またオーディション合格後、顔合わせの前に作詞を課題として複数課されていたそうだが、各メンバー1曲ずつ採用されている(ただしチャントモンキー氏作詞曲はこのアルバムには未収録になっている)。
全くの余談だが、アルバム名もアーティスト名も第1期・第3期で同じため、筆者がiTunesにCDを取り込んだところ、1期のアルバムと一緒くたに登録されてしまった。
やむなくアルバムタイトルの後ろに(2011)と(2019)を入れることに。
BiS「Brand-new idol Society」各曲紹介
ということでこのBiS始まりのアルバム「Brand-new idol Society」について、筆者の感想などをフィーリング重視で書き記す。
STUPiD
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
本人達の声で公開された最初の曲。
恐る恐ると第3期の曲に触れた筆者を打ちのめした暴走チューン。
3期としての境遇に立ち向かう覚悟を感じさせる名曲。
入りのネオ氏の声、サビのモン氏の声が特にかっこよくてたまらない。
是非聴き入ってもらいたい一曲である。
BiS-どうやらゾンビのおでまし-
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
MVが公開されているリード曲。
ピアノやストリングによる壮大で美しいバッキングに、疾走感を感じさせるバンドサウンドを絡ませたWACKらしい感動的な曲になっている。
MVもセブ島のものすごいゴミの山で取られておりなぜかすごくBiSらしい。
SURRENDER
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
筆者としてはアルバムイチのおすすめ曲。
メンバーがシャウトやデスボイスを発している。
特にイントロで聴けるデスボイスは結構凄まじい響きである。
破滅的に疾走していく音は切なくも美しい。
冒頭ネオ氏が歌うフレーズを、ラストにヒグラシの鳴き声とともに再度ティ部氏が歌う。これがまたなんとも良い。曲が終わったと思ったら聞こえてくるので最後まで油断せず聴くべし。
ちなみにメンバーのインタビューでのコメント曰く、渡辺氏としては「”primal.”と”スパーク”に次ぐ自信作」だという。
リフレイン
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
ミディアムテンポの聴かせる一曲。
断片的に過去曲の詞が垣間見える。
BiS3
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
いち早く公開された曲。
WACKの曲としてもなかなか新機軸なジャズ・ファンクな曲調である。
インパクト大。
this is not a love song
作詞:竜宮寺育 作曲:豊住サトシ
竜宮寺氏らしい特徴的な詞の非常にエモーショナルな曲。
曲は2期の曲のいくつかのトラックを手がけた豊住氏である。
ギターのトーンの美しさが際立つ。
1,2,3!!!
作詞:松隈ケンタ×ネオ・トゥリーズ 作曲:松隈ケンタ
読みは「ワンツースリー」とのこと。
6曲ほどあった作詞の課題の中でネオが唯一最後まで思いつかなかった曲。最終的に時間をかけて臨み、意味がなさそうでありそうな線を狙った感じに仕上がったとか。
シンセサイザーの迫力ある音使いと一定に鳴るキックが体を揺さぶるような曲である。
absolutely meeeeee!!
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
一見アルバム内では他にないくらい非常にポップな仕上がりを見せる。
そんな雰囲気だが、バンドサウンドは重厚。
そして詞はなにやら肥大する自意識のようなものを辛辣に皮肉る感じである。
ナンデスカ?
作詞:トギー 作曲:井口イチロウ
BiS3的なジャジィな雰囲気の一曲。
トギー氏が詞を担当、作曲は井口イチロウ氏が担当している。
「基本的には大人を信じているタイプ」だというトギー氏が自分を戒めるために書いた詞だとのこと。
thousand crickets
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
不穏な曲である。
怪しいエフェクトのかかったボーカルでメンバーの歌唱が終始なんとも虚無的なのがヒリヒリと魅力的。
なかなかクセになる一曲。
teacher teacher teacher
作詞:イトー・ムセンシティ部×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
イトー氏が詞を担当したどことなく卑猥な雰囲気を纏った詞の一曲。
筆者としては応援するばかりである。
新潟出身のイトー氏なりに自分の書けることとして授業でやった「田植え」をチョイス。
strawberry girl
作詞:マナコ・チー・マナコ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
マナコ氏作詞曲。
優等生ながら厨二な諸々を嗜んでいたマナコの趣味が滲み出る詞がなかなかすごい。
トギーのシャウトも秀逸。
LET’S GO どうも
作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ
アルバムラストを飾るのは第1期の名曲・「レリビ」のような前向きな響きを伴ったメロコアチューンである。
アルバムラストにして、改めての自己紹介的な位置付けでもある。
お祭り騒ぎのような部分のレコーディングにはスタジオにいる大人も交えて録音しているという。
併せて読みたいインタビュー
音楽ナタリー BiSが3度目の始動!新メンバー&マネージャーの初インタビューに見る“本気モード”
2019.08.14掲載
参考
BiSが3度目の始動!新メンバー&マネージャーの初インタビューに見る“本気モード”音楽ナタリー
メンバー5名(掲載時にはすでにマナコ氏は脱退済)に渡辺氏を加えたロングインタビューである。
渡辺氏は今回BiSの“マネージャー”として原点回帰を図っているとのことであり、このインタビューでは渡辺氏が話す部分も多く、興味深い。
余談だが、マナコの作詞した詞のくだりで「方向性の違い」を表面化しているようなやりとりがあって気になるところ。うむ。
Skream! 第3期BiS、夢の続きへ“そこ(武道館)でやらないと終わらせられない”
2019.08.14掲載
参考
第3期BiS、夢の続きへ“そこ(武道館)でやらないと終わらせられない”Skream!
メンバーのみのインタビュー。各メンバーのフォロワーが1万3,000~1万4,000人前後の時期にされたインタビューである。
各曲に対する想いであったり、周りの「BiS」に対する期待へのプレッシャーについてなどが語られている。
bounce 繰り返すのは思い出、もしくは悲しみ、あるいは 急劇な2度目の終焉を経てまたも新生したBiS。選ばれし5人の作り上げたファースト・アルバムは、別の未来へ向かって最上の音を鳴らす!
アルバム購入時にタワレコでもらってきたbounceが全編BiS特集である。
渡辺氏を交えたインタビューと、メンバーによる各曲解説が掲載されている。
渡辺氏による、メンバー選出の理由やメンバーによるレコーディングやMV撮影のエピソードなどの内容担っている。
現メンバーが2期BiS解散についてどのように感じていたのか、といった内容もあり(その時のなにやら楽しそうにしている渡辺氏が面白かったりする)。
おわりに BiSが始まった
ということでBiSのデビューアルバム「Brand-new idol Society」の紹介であった。
WACKやBiSに興味がある方・あった方は是非聴いてほしい名盤であると強く言いたい、そんなアルバムなのだ。
WACKの楽曲の中でも攻めた曲満載のBiSだったが、今回新たに始まったBiSのデビューアルバムもよくもこれだけのクオリティでまとめて新曲が出来上がったものだと恐れおののくばかりである。
特に前半の攻めた曲には完全にやられた。
ちなみにアルバム未収録曲も期間限定で聴けたりする。
参考
新曲「少年の歌」「Good bye」「kAsAbutA」無料DLのお知らせ。BiS公式サイト
「少年の歌」はマナコ・チー・マナコ作詞、
「Good bye」はネオ・トゥリーズ作詞、
そして、「kAsAbutA」はチャントモンキー作詞となっております。
そして本来楽曲とは関係ないが、それにしたっていきなりのメンバー脱退は何度目であろうと面食らうものである。
それはメンバーこそ自身こそ面食らっただろう。
そして何かを為すために強い覚悟で臨む残ったメンバーはさらに強く進むしかない。
これもBiS一つの物語として飲み込んでこれからの活動で魅せてほしい、そう願うばかりである。
いやはや、それにしてもBiS、やはり面白いものである。